リニューアル中の大阪市天王寺動物園から、入園者の立場にたった調査をとの依頼がありました。?十年ぶりに訪れた動物園にすっかり魅せられたメンバーたち。立地条件、緑の豊かさから考えても恵まれた環境にあるこの天王寺動物園一帯がだれもがいつでも行けて、ゆっくり憩える身近な空間、そんな夢のような市民のオアシスにならないだろうか。私たちのこの思いを形にするために、動物園からの調査依頼に主体的に取り組むことにしました。それから約4年。私たちが行なった調査、共感してくださった市民と一緒に提案を考えるために開いたワークショップ、そして提案書「大阪市民のオアシスはZOOっとここ!」の完成までをご紹介します。
<調査内容>
アンケート調査、グループヒアリング調査、子どもの追跡調査、車イス使用者によるバリアフリー調査、視覚障害者・大学生とともに行った踏査などを実施。できるだけ実際の声を集めたいとの思いから、調査方法を工夫しながら行いました。(2000年12月~2003年2月)
➡のべ1174人もの方にご協力いただきました!
<勉強会開催>
連続公開学習会『使いたくなる公共施設~利用者の視点から~』と題して専門家の方々をお招きし、5回の公開学習会を開きました。
- ワークショップ(1)行政とのパートナーショップ
ー私たちの提案~実現ー「大阪市民のオアシスは?」
日時:2001年10月28日(日)10:00~13:00
講師:まちづくりプランナー 山本一馬さん
企画目的:8年間の活動を踏まえた私たちなりの行政とのパートナーシップのあり方を、ビデオや展示、トークを通して具体的に伝え、自分発の思いがあれば、思いを形にしていくことはだれにでもできることを理解してもらい、動物園プロジェクトに関心をもってもらう。
参加者数:15名(当会メンバー5名含む) - ワークショップ(2)「あなたが見つけたオアシスはどんなですか?しょっかく絵本にして表現してみませんか」
日時:2002年1月20日(日)13:00~16:00
講師:造形作家 光島貴之さん
企画目的:視覚障害者である造形作家光島貴之さんのワークショップを通して、視覚障害者にとって見える動物園とはどういうものかを考えるきっかけの1つとする。視覚以外の5感を研ぎ澄まし、新たな感覚を呼び起こした上で、豊かな想像力を働かせ、しょっかく絵本製作へと誘う。しょっかく絵本づくりからだれもが楽しめる動物園のあり方をさぐる。
参加者数:35名(当会メンバー4名含む) - 講演&ワークショップ(3)「ハンズ・オンって楽しい!」
日時:2002年2月3日(日)13:00~16:00
講師:ハンズオン・プランナー 染川香澄さん
企画目的:天王寺動物園のリニューアルに伴い、市民にとってのどのような動物園になればよいのかを考えていく過程において、今回は、ハンズ・オンの視点に焦点を当てる。ハンズ・オンの考え方を理解する入り口とし、これをきっかけに動物園におけるハンズ・オンをはどのようなものかを考え、動物との新しい付き合い方を探る。
参加者数:23名(当会メンバー4名含む) - ワークショップ(4)「手で観る自然教室」~天王寺動物園の緑とあそぼう~
日時:2002年9月28日(日)13:00~16:00
講師:自然観察アドバイザー 鎌谷計三さん
企画目的:視覚障害者にとって見える動物園とはどういうものか。今回はさまざまな生態系を再現した空間のなかで動物と植物との人間のつながりを自然に感じることのできる緑豊かな動物園のもう1つの楽しみ方を体験し、自然界の営みの不思議さを発見する。動物園内の多種な植物に注目し、視覚以外の五感を使ってのワークショップを実施。動物園=動物だけでない、日ごろ使わない五感がある、ということに気づいてもらう。また剪定小枝(廃物)を使って小物をつくることで、楽しみながら、環境(リサイクル)を考えるきっかけとする。
参加者数:16名(当会メンバー4名含む) - ワークショップ(5)「つくろう」
日時:2002年12月7日(土)13:30~16:30
講師:兵庫県立大学助教授 尾﨑公子さん
企画目的:本物のヒツジの毛をつかって実物大のヒツジづくりとコラージュ(半立体貼り絵)づくり。一般の人、専門家(学生)、動物園の三者を双方向につなぐことで、新たな協働のスタイルを確認する。動物園で一方的に動物を見る関係から、触れる、つくる楽しみへ。ハンズ・オンの実践。
参加者数:39名(講師手伝い京都精華大学芸術学部造形日本画専攻 学生10名・当会メンバー4名含む)
<提案作成>
いろいろな考えを持つ人たちとつくったほうがより活きた提案になると考えた私たちは、さまざまな立場の市民に「提案書を一緒につくりましょう」と呼びかけました。市民と行政の方総勢34名によるワークショップ「市民活動が本になるって楽しい!」の誕生です。
「天王寺動物園で楽しむ」「天王寺動物園で学ぶ」「天王寺動物園で憩う」3つのチームに分かれ、それぞれワークショップを重ね、提案内容を話し合いました。(2003年7月~2004年4月)
<提案書完成>
ワークショップを重ねることで、実に100以上もの提案が出てきました。それらを各チームごとにまとめています。また、調査の内容なども詳しく載せました。メンバーにとって、苦手なパソコンを駆使しての文章作成作業は大変!!
最後に天王寺動物園から少し離れて中長期的に見た天王寺界隈の発展について、市民のオアシスとはなど、専門家のご意見もいただき、提案書が完成。
この提案書は、約1000人の市民のご協力を得て実施した大阪市天王寺動物園の調査結果・分析をまとめた「調査編」(118ページ)とさまざまな立場の市民34名とともに重ねたワークショップとそこから生まれた提案、さらにこの提案が発展し続けていくための展望を載せた「提案編」(126ページ)の2冊に分かれています。
大阪市天王寺動物園を市民のオアシスにしたいという共通の思いを持った市民と行政の人々が、主体的にワークショップに参加し、対等の立場で議論を重ねてできあがりました。
<パネルディスカッション開催>
日時:2004年10月11日(祝・月)14:00~17:00
場所:天王寺公園内 映像館
テーマ:動物園における市民との協働とは? すべての人にとってのオアシスとは? これからの市民と行政の協働のあり方について
コーディネーター:橋爪紳也 大阪市立大学大学院文学研究科助教授
パネリスト:上嶋清子(ろう児のためのフリースクール「きずな」アドバイザー)・小山琴子(おんなの目で大阪の街を創る会代表)・芝野利夫(大阪市天王寺動植物園事務所職員)・長白清子(NHK大阪放送局ディレクター)・山本一馬(街角企画株式会社代表取締役)
※敬称略 50音順 肩書はすべてパネルディスカッション開催当時
<パネルディスカッションを終えて>
みなさんお忙しい中、遠路東京から来てくださった方も含め、参加者は約110名にのぼりました。時間配分など、反省点も多々ありましたが、特に、動物園の現場で働く職員さんとの協働という点で、「市民と行政との新しい形の協働」と評価していただき、新しいひとつの方向性が得られたのではないかと思っています。これから、提案の実現に向けて、動物園とともに、継続して活動していくことが必要だと強く感じています。