散歩をしていた男性があるお家の前を通りかかったとき、お家から出てこられた人に、ペットボトルのキャップを開けてほしいと頼まれたという投書を読みました。ペットボトル飲料水は特に災害時の飲み物として必要で、備蓄もされています。また誰もが自分の飲みたいときに飲める状態であることが大切だと思います。それにもかかわらず、投書のように自分で開けられない人がいるということを知り、ペットボトルの開けにくさについて調査することにしました。

<調査1>

食品全般について開けにくくて困っているものはないか、ヒアリング調査を行いました。
日時:2012年12月
場所:高齢者外出介助の会(大阪市中央区)のサロン前・大阪市都島区のいきいきサロン・大阪市港区のふれあい喫茶

➡40代~80代までの男女、63人の方にご協力いただきました。
シール容器を開けにくいと感じている人が最も多いという結果になりましたが、ペットボトルについても、びんの蓋と同様に、開けにくいと感じている人がいることがわかりました。

<調査2>

体操教室を終えて出てこられた40代~80代の女性101人に聞きました。
「ペットボトルのふたが開けにくいと感じたことはありますか?」
日時:2013年11月18日・19日
場所:神戸市東灘区にある体操教室の前
回答者の年代・性別:女性101人 40代:5人 50代:14人 60代:41人 70代:31人 80代:10人

➡ “ある” “時々ある”と答えた人を合わせると・・・70代・80代女性の約3分の2!

<調査3>

代表的なメーカーのペットボトルを購入し、左手首に傷みのある65歳女性に実際に開けてもらい、その感想を聞き取りました。

➡ペットボトルによって開けやすいさの違いがあったが、キャップの形状や大きさ、本体の太さによる違いは見られなかった。

<調査4>

安価(100円程度)で、比較的手に入りやすい3種類のペットボトルオープナーを使って実際にペットボトルを開け、使いやすさを比較してみました。

➡私たちが調べた国内メーカー5社のペットボトルでは、500MLのキャップはすべて直径28mmだったが、2Lは4社が29mm、1社のみ30mmだった。30mmのキャップには入らず、使えないものがあった。

<メーカーへの問い合わせ>

「輸送途中などで開栓することなく、かつ消費者が開けやすい」という相反する要素に対して、飲料メーカーがどのようにしてキャップの締め具合を決定しているのかを知りたいと思い、メールで問い合わせをしました。

➡4社からお返事をいただき、スクリューキャップテスターやトルク計と呼ばれる器械での測定と、実際に人が開けてみる官能的な検証の2つの方法で決定しているということがわかりました。

<提案>
  • ペットボトルメーカーへの提案
    「代表的なペットボトルオープナーが使えるように、現在主流となっている直径28~29mmのキャップへの変更を検討していただきたい」という内容の提案をしました。
  • 行政への提案
    災害時に備蓄するペットボトルと一緒にペットボトルオープナーも備えてもらえるよう提案をしましたところ、「防災に女性の視点で防災を考えているので検討したい」「避難所などで他人に物事をお願いすることに気が引けるという意見を聞いているので、参考にしたい」というようなお返事が届きました。
<調査を終えて>

この調査を進める中で、「自分でペットボトルを開けられるかどうか」ということが果たしてそこまで必要なことなのだろうかということを何度か自分に問いかけました。開けられないなら、そばにいる人に頼めばいいのではないかと。

しかし、それまで開けにくいと感じていた人が開けやすくなったり、道具を使えば開けられるようになったりするならば、それはその人にとって喜びにつながるのではないでしょうか。

65歳以上の人が人口の25%を超えた今の日本で、生活の質をできるだけ落とさないためには、身の回りのことは自分でできるということが必要だと感じます。人と人のつながりももちろん大切ですが、商品が改善されたり、道具を使ったりすることでそれが解決するのであれば、それに越したことはないのではないかと思います。

また、実際にその立場にならないとわからないことがたくさんあることも改めて感じました。しかし、自分に余裕がなければ、相手の状況や気持ちを想像するゆとりもなかなか生まれてこないと思います。自分のことだけでなく、他人を理解し大切にしようという空気が社会全体を包むようになれば、さまざまな立場の人が生きていきやすい社会になるのではないでしょうか。

「ペットボトルのキャップが開けにくい」という事象は小さなことかもしれませんが、人としての心のあり方まで考えさせられたテーマになりました。